豐葦原

明治天皇御製 世はいかに開けゆくとも古(いにしへ)の國のおきては違へざらなむ

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護

Author:護
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眞正護憲論(新無效論)解説
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眞正護憲論は立法者の意思にも適ふ ―法律意思説と立法者意思説―

■まづ始めに、帝國憲法は歴史的に存在してゐる規範を書き表したものなので、「立法」とは嚴密には違ふと思ひますが、便宜上、伊藤博文らを帝國憲法の「立法者」とここでは呼ぶ事にします。

そして、今囘の話は「法律意思説」と「立法者意思説」といふものに關します。それらの意味は『法律用語辞典』から書き起こしたものを下に載せてありますが、最後の方までこれらの言葉は用ゐませんので、ご存知なくてもこのまま讀み進めて大丈夫です。

■では、本題。

眞正護憲論(新無效論)は、「帝國憲法の76條1項の無效規範の轉換により、憲法としては無效な占領憲法が講和條約に轉換される」と云ふものですが、

これに對して、「76條1項は帝國憲法の制定以前に存在した法令に適用があるのであつて、帝國憲法の制定後である占領憲法には適用がない」と云ふ人を時々見かけます。

しかし、76條1項には「現行ノ法令ハ」とあります。それなのに、なぜ占領憲法に適用がないのか不思議なのですが、恐らく伊藤博文の『憲法義解』の76條についての記述などからさう思ふのかもしれません(實質の執筆者は井上毅)。

■これについて、2つ述べます。

まづ①伊藤博文は憲法ではないといふ事。そして、②眞正護憲論に於ける「無效規範の轉換」は立法者の意思にむしろ適ふ、といふ事です。

①伊藤博文は憲法ではないといふ事について。

憲法はあくまで帝國憲法であつて、伊藤博文は憲法ではありません。遵守すべきは憲法です。極端に云へば、「立法者がどう思つてゐても、憲法にはかう書かれてゐるよ」でおしまひです。

勿論、條文を解釈する上で參考にする場合はありますし、立法者の意思が多かれ少かれ條文に反映されるものだと思ひますので、全く排除するわけではありません。つまり、立法者か條文かの二者澤一ではなく、原則として優先されるのは條文だといふ事です。立法者の意思が憲法よりも優先されるとしたら、立法者が憲法よりも上といふ事になつてしまふからです。

この樣に述べると、「では、占領憲法は憲法と書かれてゐるのだから、憲法なのではないか。條文が優先するのだから」と云ふ人がゐるかもしれません。しかし、占領憲法は憲法として無效なので、何が書かれてゐても、憲法としての效力はそもそもありません。

では、話を戻して76條1項を見ます。76條1項には「法律規則命令又ハ何等ノ名稱ヲ用ヰタルニ拘ラス此ノ憲法ニ矛盾セサル現行ノ法令ハ總テ遵由ノ效力ヲ有ス」とあります。

ポイントは「現行ノ法令ハ」もさうですが、「何等ノ名稱ヲ用ヰタルニ拘ラス」もポイントです。つまり、「憲法」と名乘つてゐても、と云ふ事です。そして、占領憲法は現行の法令です。

從つて、占領憲法は76條1項の「無效規範の轉換」の適用範圍にあります。

②眞正護憲論は立法者の意思に適ふについて。

立法者が、帝國憲法の制定以前に存在した法令にだけ76條1項を適用させるつもりであつたとしても、それではなぜ、その樣な條文を設けたのでせうか?76條1項の趣旨・目的はなんでせうか?

簡單に言へば、帝國憲法の制定により、それまで存在してゐた法令が否定されて、社會的な混亂などが起きては困るので、制定以前の法令も引き續き、憲法に矛盾のない限り遵由の效力があるといふ事です。要するに、76條1項は「法的安定性を確保するため」の條文です。

從つて、同じく76條1項で法的安定性の確保を目的とする眞正護憲論は立法者の意思に適ひます。

そして、伊藤博文の「憲法義解」の序には、かうあります。

憲法義解は「敢えて大典の解説や説明とするのではなく、いささか備考の一つに付け加えられる事を冀(ねが)うだけである。もしそれ、精通し類推して意味を押し広めて解き明かす事は、後の人に望む事であり、博文の敢えて企てる所ではない。」(HISASHI氏の譯文、( )文は私)。

これは立法者自身が法律意思説を望んでゐると云ふ事ではないでせうか。つまり、立法者意思は法律意思説なのです。

 『法律用語辞典』(有斐閣第2版)から

【立法者意思】 法規の中に表現されている立法機関の意思。法の解釈の重点を立法者の意思(法案起草の理由書や立法過程の討議等がそれの資料となる)におくべきであるとする説(立法者意思説)があるが、法規はそれ自体客観的な意味のある実在であるとして、立法者の意思だけではなく、法の立つ社会関係、その社会の要求や通念等と照応した目的的・価値関係的な解釈を行うべきものとされる。→法律意思説

【法律意思説】 法を立法者の意思から解放して、法律自身の意思を探求することを法解釈の任務とする考え方。これに対し、立法者の意思、立法の精神・理念を探求することを法解釈の任務とする考え方を立法者意思説という。→立法者意思


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